EXOのTempoについて

ツイートが思ったより反応あったのでちゃんと書くことにしました。
作曲に参加したJamil Chammas本人がインスタストーリーでBed Squeak音がめっちゃ入ってるよ!と言っていたし、ジャージークラブを知らない人でも今回はこのベッド軋み音について言及している人が多い印象を受けます。 ということでまずはツイートでも書いた

です。ここに辿り着くまでに膨大な量の説明をしなければなりません。興味ある方は読んで下さい。
年末に記事とかに書いたりしてるから知ってる人は知ってるだろうけど、今回はこれが初めてって人にも分かるように書くぞ…。
まずはジャージークラブについて書きます。ここが多分一番ボリュームがすごい…。
ジャージークラブは音楽ジャンルの名前で、日本のクラブシーンでは2013年頃に流行ったイメージがあります。ちょうどその当時書かれた記事が文化、歴史的な背景を知るのに分かりやすいです。
RA: Jersey club: ニューアークから世界へ
タイトルにもあるようにニューアークアメリカ、ニュージャージー州最大の都市ですが、ジャージークラブのジャージーはそのニュージャージー州のジャージーから来ています。もともとはボルチモア・クラブ(B-more、ビーモア)というアメリカのボルチモアという街を発祥としたジャンルをルーツとして出来たもので、ビーモアのヒット曲「Dikkontrol」のビートがジャージークラブのリズムの原型となっています。

1:30~始まるこのドン、ドン、ドン・ドン・ドンの部分です。
2010年に出た比較的初期のジャージークラブはこんな感じ。今のものに比べるとシンプルですが、1:30頃~Bed squeak音が入ってます。

ちなみにこのBed squeak音のサンプリング元は2004年に出たTrillvilleのSome Cutではと言われています。

この曲自体はめちゃくちゃHiphop。ちなみに初期のジャージークラブはBed squeak音が入っていないものも多いです。そしてここから段々とBPMも速くなり、更にニュージャージー以外のアーティストが他ジャンルとも融合させ、BPM135~145ぐらいに落ち着きました。
私はクラブシーンで流行りだした2013年頃からしか追ってないのでそれ以前のことはあまり詳しくないですが、当時は1990年代後半~2000年代前半のR&B曲がサンプリングされたジャージークラブRemixが連発されていて、まさにその原曲のR&Bをリアルタイムで聴いていた世代だったのもあり懐かしい~と聴いていた覚えがあります。

あとは日本のクラブシーンでも流行ったのでJ-popやアニソンのRemixなんかも結構あります。
あとはTrippy turtleとか。
アジアのポップス的な面で言うと元EXOのルハン君のカンフーパンダOST曲が上記のTrippy’s Themeの丸パクリ感凄いですがリリースされています。2014年5月に出たクラブミュージック曲を2015年12月に一般大衆の目に触れる映画の曲として作って出す所までの速さは(勝手に)めちゃくちゃ評価しています。
K-popとしては2016年2月に出たNu'estのOvercomeでしょうか。

これについては この記事でめっちゃ語っているのでそれを参照して下さい。
曲はPledisお抱えのアーティスト兼プロデューサーのBumzuが作っており、サウンド的にはそこまでジャージークラブという感じではないですがBPMは138でBed Squeak音もたくさん入っているし確実にジャージークラブを意識して作っているなと感じます。
Pledisつながりで2017年11月にリリースされたSeventeenのRoketにもBed Squeak音が入っており、作曲にBumzuがいるのでその辺のアイディアなのでしょうか。 ちなみに前述したJamil Chammasについてですが、彼はアメリカ人のトラックメイカー/プロデューサーで韓国ではSM関連の楽曲を中心に手がけています。最近のK-Popの楽曲は作曲が連名なことがほとんどですが、先頭に名前がある楽曲がテミンのDrip dropSHINeeのPrism、셀 수 없는 (Countless)、Red velvetのRookie、そしてNCT127のBaby Don’t Like Itにも3番目ですが名前があります。NCT127のBaby Don’t Like Itは2017年1月にリリースされたアルバムに入っていますが1:40頃に本当にさりげなくBed squeak音が入り、アウトロでキシキシ音が鳴りながら終わります。今回のTempoリリース前のBed Squeak音推しインスタストーリーを見て、もちろんここまでの背景を踏まえた上でですが、ジャージークラブという音楽ジャンル関係なくこの方がBed Squeak音が好きなんだろうな…と感じました。 と、ここまでジャージークラブとポップスの関係について書きましたが、ジャージークラブやB-moreなどに興味が湧いた方はこのミックスとかおすすめです。

さて、ここからはEXOのTempoについて書きますよ。本編に辿り着くまでに無駄な情報が多すぎた…。ちなみに最初に断っておきますが小中とクラシックピアノを習ったことがあるぐらいでそれ以外の音楽の勉強みたいなものはしたことがない人間が書くことです。話半分に聞いて下さい。そして手元にTempoの音源かMVを用意して下さい

まずイントロ(というかもう1小節目からボーカルが入ってくるのでイントロとかないけど)はシンセで始まりフィンガースナップ音的なスネアが入ってきますがここまでは半分(BPM116なので半分の58でリズムを取る事を半分と言っています)、サビ前の1小節(0:17頃)で4つ打ち(1小節を4つに分けてその4つ全部にキック(バスドラムの音)があるということ、Don’t mess up my tempo~の前がドン!ドン!ドン!ドン!とドラムが鳴ってるのが分かるはず。ドンドンドンドン!の所で取るとBPM116です)になります。普通だとこのBPM116の4つ打ちのままバースやサビに入っていくかなと思いきや、ドラムが変なんですよね。このぐらいのBPMだと普通は1,3拍目にキック、2,4拍目にスネアが来ます。分かりやすい例はこちら。曲調もファンクっぽいし普通はこういうのが来ると思います。(イントロが長いのですが1:18~が言いたい部分です)

しかしTempoのサビは1,2,4拍目がキックで3拍目がスネア→1,2拍目がキックで3,4拍目がスネアというドラムの打ち方です。2拍目にスネアがないことで拍の取り方が半分っぽくなったように感じます。そして更にBed squeak音が1拍ずつキコキコ入っているので訳が分からなくなる…。
サビが終わると매혹적인 넌 lovely~틈 없이 좁혀진 거리~불규칙해지는 heartbeat~잠시 눈을 감아 trust me~と4小節ありますがここは1小節にキックが4拍入っていて4つ打ち、ハウスっぽいです。更に最後の4小節目だけはまた違う音色のキックが4拍打たれて次への展開を予感させます。
その後セフンのラップからバースに入りますがここのビートは2,4拍目にスネアが来る普通のファンクっぽい感じ。そしてまたサビで半分に落ちる(実際には変なドラムの打ち方だけど)→4つ打ちパート4小節→チャニョルのラップから次のバースに入りまたファンクっぽい感じ→Don’t slow it up for me~から切り替わりその後のDon’t mess up my tempoと繰り返す所は完全にビートが半分に落ち、BPM58になります。말해のレと닿게のケで韻を踏んでリズム良く、ボーカルの見せ場がありピアノが入り→またサビに戻りますが、さっきまで完全にビートが半分だったので今回のサビは今までのサビに比べて逆にBPM通り116っぽく感じるかもしれません。…でここで終わるっていう。
ビートが半分になる所とか一回展開が変わって落ち着く、落ちる所をドロップとかって呼びますが、ドロップがめっちゃ長いしその後サビが8小節あるだけで終わるの、個人的には物足りないというか…もう少しドロップから戻ってきてBPM116っぽい所聞きたくないですか?恐らくこの展開の仕方がちょっと物足りなくもう一回聞きたくなる仕掛けなのかなと思っていますが…。
TwitterでもずっとTempoを聴いてるって言っている方をちらほら見かけるのでこの仕掛けに見事に引っかかってるのかなと。あとは逆に、一般的な展開をしている曲に慣れている方には落ちたり戻ったりを頻繁に繰り返し、ジャンルもつぎはぎに聞こえるので聞き慣れなくどう曲に乗ったら良いのか困惑する方もいるかもしれないです。
落ちたり戻ったりを繰り返すのはクラブミュージックっぽいなというのと、ジャンルがつぎはぎっぽいのは今のK-Popを表しているなと思います。ところで上のジャージークラブの話をした時に散々書きましたが普通はBPM140ぐらいのものにキコキコ入るんですよ。BPM116(しかもサビは半分っぽいから実質58?)にキコキコが入っているの、クラブミュージックとしてジャージークラブを聴いているとほぼ体験出来ないことですし、サビは音をループすることが多いジャンルですがもちろんその範疇を超えて普通にポップスとして歌ってますし、そのあたりがクラブミュージックをポップスに落とし込む技術が長けてるK-popっぽいなぁと、4分1秒の曲を聴いて感じたことでした。
以上の感想からこのツイートが生まれました。